チーズ産業へのクラフトの最大の貢献は、プロセスチーズの製造方法を開発し、チーズの品質とフレーバーを長期保存できるようにしたことです。クラフトはプロセスチーズの製造に何度も失敗を繰り返しながら、遂にある発見をします。それは加熱後の脂肪分と固形分の分離は、撹拌速度をあげれば防げるというアイデア。これによりプロセスチーズの製造に成功したクラフトは、1916年に製法の特許を取得します。
プロセスチーズのパイオニアとなったクラフトが次に取り組んだのが、売り方におけるアイデアです。それまでチーズは、ホイール(大きな円柱形状のチーズ)を切り売りして販売していたため、品質が均一ではありませんでした。露出した端の部分が空気にふれて古くなったり、カビがはえたりして、売り物にならず捨てていたのです。そこでクラフトが考案したのが、”缶入り”のプロセスチーズです。消費しやすいサイズにカットしてブリキ缶につめるクラフトのアイデアは、傷みやすいという問題を解決し、業界に革命をもたらしました。消費者の品質に対するニーズに応えるとともに、ムダを省くことにも成功し、クラフト・ブランドの存在は広く知られるようになりました。